【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

「ボヤージュで働いてるって言っても、桃菜は碧人さんとは違って本社とかじゃないからあ~。
それにコネ入社だしさあ~~」

「母さん、ボヤージュに出来た新しいカフェ行きたいって言ってたじゃん。姉ちゃんが働いてるなら今度一緒に行ってみようか」

「そう~?是非是非来てよ~。サービスしちゃうから!」

まさか、あの頃家族とこんな会話が出来るようになるとは夢にも思っていなかった。
それだけ私も大人になったという事なのだろうか。

あの頃、私はひとりぼっちだと思い込んでた。
実の母親を亡くして、父が再婚した後
振り返ってみると、いつだって三人の幸せそうな家族の姿が目に焼きついている。

寂しい、なんて口にも出さなかった。
家族の愛情なんて求めていないと自分に言い聞かせ、歩み寄る事は止めた。

けれど碧人さんに出会って小早川家で過ごして、ごく当たり前にある家族の日常に溶け込んで、それを居心地の良いものだと感じる事が出来た。

「そうか、じゃあ桃菜は碧人くんの家に住むのか」
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