【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

父の横に立つ継母と拓斗は穏やかな笑みを浮かべていた。

「今度桃菜の働いてるカフェに来てね。 特別に家族割するから」

素直にやっと言えた言葉はそれだった。
余りにも長い時間会わずに居たから、どうやって接していけばいいか分からない。

けれど何となく碧人さんが側にいてくれるのならば、この家族とも新しい形を作っていける予感がしていた。

―――――

その日はてっきり家に戻るかと思えば、碧人さんに行きたい場所があると言われた。

都内の高級ホテルに連れて来られて、一体何事かと思ったが
室内から見える東京の夜景を見た瞬間、キャーキャーと騒いでしまった。  こんな素敵な場所に来るの、いつぶりだろう…。

窓に手をぴったりとくっつけて、うっとりする程美しい夜景を見下ろしている。

「こんな所に桃菜を連れてきて、どうするつもり?」
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