魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「なるほど」
 そこでライトも空を見上げた。無限ではなく有限であった、ということか。
「いや、だが。回復薬を飲んで魔力が回復したこともあったじゃないか」

「まあ、二ですけど。回復薬一本で二ですけど」
 よっぽど二が悔しかったのだろう。二、二、と何度も口にする。

「二でも、回復したことに代わりはない。つまり、使い切ったら終わりというレインの考えは成り立たない」
 彼女のその考えを否定する。それは妹を励ますためにも。
 さわさわと木々が揺れた。言葉を紡ぐことができない。それぞれ何かを想う。

「レイン。せっかく薬師の元にきたんだ。お前の魔力が回復するような回復薬を作ってみるというのもいいんじゃないか?」

「あ」
 考えていなかったのだろう。
「そうですね。せっかくおばあさまの元に来たのだから、それを新しく作ってみるのもいいかもしれませんね」
 ここでやっと妹の声が明るくなった。
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