魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 今思えば、父親も親バカだったのだろう。レインだけには、優しい表情を見せたような気がする。

「魔力鑑定」

 そんな穏やかな父親の表情も長く続かなかった。驚いたように目を見開く。

「おい。アーロン」
 父親は突然、部下の名前を呼んだ。「お前も()てくれ」

「団長?」
 怪訝そうに上司を見たアーロンと呼ばれた男は、失礼しますと言ってレインの両手をとった。

「魔力鑑定」
 そしてこのアーロンも同じように目を見開いた。
「団長?」
 振り返り、上司を見上げる。

「やはり、()()か」

「え、ええ。恐らく」

「父さん」
 声を上げたのはライト。「何が起こったんですか? レインが不安になっているからきちんと説明してください」

「父さん? なるほど、こちらは団長の娘さんでしたか。それなら、納得できるような気がします」
 アーロンの顔が和らいだ。

「アーロン。あとは任せてもいいか?」

「はい。残りは少ないですからね」

「ライト、レインを連れてこちらに来てくれ」
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