ふんわり王子と甘い恋♡
暗闇は……表情を隠してくれるはずなのに。
フワリくんの表情は……ちゃんと、ハッキリ、見えたから。
困らせて……迷惑かけてゴメンナサイを、言おうか迷った。
でも言ったらフワリくんは、きっとまた、困ったように笑うから。
そんな顔、もう見たくない。
「、……大原……セン、パイ…」
もう困らせない。
迷惑だってもうかけない。
だから……そんな顔、しないで。
「……ん、……怖、い?」
「、…イエ、」
好きになってほしいなんて、思ったりしない。
だから。
そんな顔で、笑わないで……
「階段、暗いから、気ぃつけて、」
「、ハイ、」
手すりに掴まって、階段をゆっくり下りる。
大好きな人と。
怖い気持ちと、悲しい気持ちと一緒に。
階段を、下りる。
4階につくと廊下の電気は点いていて、3年生もまだ何人か残っていたから怖い気持ちが薄れていく。
5階とは全然違う雰囲気に、さっきまで、違う世界にいたような気さえする。
そのまま階段を下りて、1階の、玄関へ向かった。
フワリくんのリュックにも、私の手首にも、青いミサンガがついたまま。
……なのに。
なんでだろう。
なんでこんなに、遠い気がするんだろう。