白の悪魔と黒の天使
この日以降、しばらく麗華は右近と出くわすことはなかった。

それに比例するように、黒瀬と会うこともなかった。

当たり前なのだが。

営業部と海外事業部。

秘書課と接点なんて、ほとんどないのだ。

右近と会わないのは安堵したが、黒瀬の顔すら見られないのは、少し寂しく感じた。

…寂しい?

何故そんな事を思うのか。

麗華はしばし考える。

「…さん」
「…」

「灰原さん」
「…」

「麗華ちゃん」
「え?!は、はい。ぁ、社長。すみません」

会食のため、駐車場に向かう西園寺と麗華。

考え事をしていた為、返事が遅れた。

「珍しいな。灰原さんが仕事中にボーッとするなんて」

西園寺の言葉に、恥ずかしそうに謝罪する麗華。だが、西園寺は怒る様子もない。

「…仕事を詰め込み過ぎたかな?」
「い、いいえ!そんな事は。毎日充実していて楽しいです。西園寺社長と一緒に仕事をできる事を誇りに思ってますから」

そう言って笑みを浮かべる麗華。

その笑顔を見て、ドキッとする人物が1人。
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