フヘンテキロマネスク
「……でも、まだ早すぎるでしょ。保科くんと別れてそこまで時間経ってないのに」

「そう?よくあるじゃん、失恋した後に慰めてくれた人好きになるとかさ。まあまだ早いとかそんな理由で制御できるような気持ちならその程度ってことだとは思うけど、制御できるの?」



……もしも簡単に制御できてたとしたら、たぶん今私はここまで悩んでない。


それがもう、こたえだった。


こうやってこわがって悩んでる時点で、もうそうだったのだと思う。



「私前にまさちゃんがしばらく恋愛する気ないって言ってたとき、それでもいいと思ったけど、でも終わりを恐れて気持ちを抑え込むのは違うと思うな」



日菜の言葉は正論で、もう言い訳をする術は残されていなかった。



小さく頷くだけで黙り込んだ私に、日菜は思考の整理ができるようにと、別の話題を探すでもなくそっとしてくれた。そのままふたりで静かに食べ進める。


フォンダンショコラを真ん中まで食べ進めたとき、ドロリと濃厚なチョコレートソースが溢れ出してきた。


それは制御する暇もないくらいに、とめどなく。


一度溢れてしまったものは、もう戻せない。
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