フヘンテキロマネスク


「大丈夫じゃない。大丈夫じゃないから、一緒にいて」



それはいったいどういう理屈なんだろう。……わからないけど、胸の奥がじんわりと温かくなっていく。それに、私もちゃんと鈴本くんと話したいと思っていたからちょうどいいかも。


信号がまた青に変わって、今度こそ歩き始める。鈴本くんとふたりで並んで。


私は駅まででいいよって言ったのに、鈴本くんは「もう少し話したいから」と笑った。その笑みはどこか寂しそうに見えて、チクリと胸のあたりに痛む感覚があった。


鈴本くんはいつも淡々としていて、あまり露骨に感情が表情に出るタイプじゃない。今まで鈴本くんの表面的なことばかりしか知らなかったけれど、だんだんとわかってきたことがある。


鈴本くんは、私にありのままでいいよって言うわりには、自分だって包み隠すのが上手だ。


時折寂しそうに笑うくせに、本心は見せてくれない。そうしていつの間にか、なんともなかったみたいに普段通り笑ってしまうんだ。


今だって寂しそうに見えたのは一瞬だけで、出会った頃の私なら見間違いかな?と思ってしまうような、そんな微々たるもの。

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