フヘンテキロマネスク
――――なんでこの人はいつも大丈夫じゃないくせに大丈夫なふりするんだろう。


誰の前でなら、気を張らずにいれるんだろう。

それが俺だったらいいのに。

俺の前では弱いところも曝け出して、無理に取り繕わずにありのままでいてくれたらいいのに。


どうしたってもう、自分の気持ちを抑え込むことはできなかった。



だけど――――、



「……しんどいな」


片想いがこんなに辛いなんて、思ってもみなかったな。


縋るように見上げた空は嫌になるくらいに真っ青で。


ふらふらと歩いていた俺は体育館から少し離れたところにある自販機の影に情けなくも座り込んだ。


なんだろう、何をするにもやる気がわかない。誰かと話す気分にもなれないし、このまま何も考えずにぼーっとしてたい。


そんな願いは近づいてくる足音によって打ち砕かれるわけだけど。



「……鈴本くん?」



足音が止まったかと思えば、俺を呼ぶ声が少し後ろで聞こえた。


その声を聞いただけで、一瞬で胸が高鳴ってしまうんだから本当にどうしようもない。
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