That's because I love you.
まりあの自宅のアパートの部屋に着き、明広がコートを脱ぎながら何気なく狭い部屋を見渡すと、ふとある物が目に入った。
彼女の誕生日に自分があげた花が、ドライフラワーとなって本棚にまだ飾られていたのだ。

「…まりあ、ドライフラワーなんて作れたの?凄いな…。」
「えへへ。お花にずっと部屋にいてほしくて、初めて挑戦してみたんです。すごく簡単だったんですよ~。」
「…………。」

明広の胸に、まりあへの愛おしさがぶわっと一気に広がる。
自分がまりあと加賀見の仲を誤解していた間、まりあは本当に自分をずっと想い続けてくれていたのだ。
その事実が改めて胸に響いた明広は、二人分のコートをハンガーに掛けているまりあの元へ、無意識に歩を進めていた。

「……まりあ。」
「……!」

まりあの手からハンガーを取り上げそれをラックに掛けてやると、彼女の冷えた頬を優しく撫で、唇を重ねる。
何度か角度を変えて口付けた後、ハッと我に返った明広は彼女の唇を解放する。

「…風呂入って寝ようか。」
「…はい…っ。」

微笑んで言うと、まりあはふにゃっと平和な笑顔を浮かべて頷いた。
明広は平静を装ってまりあの頭を優しく撫でた後、彼女に背を向ける。
そして、密かにはぁー、と息を吐いた。

(……危な…っ。部屋に着いて早々、襲う所だった…。)

昨晩自分の無茶に何時間も付き合わせてしまったまりあの体が心配な明広は、今夜は絶対に彼女に手を出さないと決めていたのだ。

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