That's because I love you.
その頃のまりあは、一人暮らしの狭い自室でスマホを弄っていた。
その表情は真剣そのものである。

(…この前テレビで、デートの行き先とか"どこでもいい"って男性任せにするのは男性からしてみたら困るって言ってた…。私達の場合、私から頼みこんで付き合ってもらってる様なものだもん…なおさら御木本さんに負担掛ける訳にいかないよね。吉祥寺にある美味しそうなお店とか探しておこう…明日ちゃんと御木本さんに希望訊くのも忘れずに…。)

頭の中でぶつぶつと言いながらネットサーフィンしていると、華からLINEが届いた。

"明日はついにデートだね!まりあ、がんば~!!"

そのメッセージと可愛らしいスタンプに思わず微笑んでいると、画面にまたメッセージが追加された。

"ああいう男って割とえっちすることしか考えてないから気をつけな~wまりあ初めてっしょ?自分を大事にね!"

それを読んだまりあは、「うむぅっ」とうめき声を上げた。
困った様に頬を染めた後、力なく微笑む。

(…華ちゃん…ありがとう。…でもね、もし…もしホテルとかに誘われたら、素直について行こうと思うの。御木本さんが"彼女"に求めてること、私だってちゃんとわかってる…がっかりさせたくない…。)

(……でも…御木本さんの前で服脱ぐなんて…。恥ずかし過ぎて出来る気がしない…。…それに…、…痛いんだろうな……。)

そういった経験が全く無いまりあは、情事について少し想像しただけで緊張と恐怖に襲われ、体が勝手に震えてしまう。
ぶんぶん、と首を大きく振ってそれらを振り払う。

(…んーん…!それを覚悟で彼女に立候補したんだもん、大丈夫…!…御木本さんのこと大好きだから…大丈夫…っ。)

まりあは明日に向けて、念入りに心の準備をしていた。
まりあはずっと想い続けていた明広と付き合えることになり夢の様に嬉しい反面、彼に嫌われてしまうことがとても怖いのであった。



< 18 / 165 >

この作品をシェア

pagetop