That's because I love you.
(…うわ。もう9時?…マジか…。)

やはりまりあと居ると、時間がとても早く感じてしまう。

「…まりあ、遅くまで引き止めてごめん。送ってく。」
「いえ…!もう遅いので今日は一人で帰ります…っ。」
「もう遅いから送るって言ってるんじゃん。危ないし。」
「でもそれじゃ、御木本さんおうち帰って来るの遅くなっちゃうので…。バイト帰りはもっと遅くなる時もあるし、だいじょぶです!」
「…そう?」
「はい~。」

まりあは荷物をまとめると、帰宅のため玄関に向かう。
玄関に着き靴を履こうとして、ぴたっと動きを止めた。

「…御木本さん…。帰る前に、その…。」
「…ん?」
「……ぎゅってして…ほしいです…っ。」

まりあはおずおずと振り返り、真っ赤な顔でそう呟いた。
きゅんとときめいた明広は、彼女の望み通り、優しく小さな体を抱き締めてやる。

「…これでいー?」
「…はいぃ…っ。」
「…他には?何かないの?」
「えと…。頭、撫でてほし…。」
「…はいはい。まりあ、これ好きだよねぇ。」
「…はい。…だいすきです…。」

優しく抱き締め髪を撫でてくれる明広に、まりあはぎゅぅっとしがみつく。

(…御木本さんと一緒に居られる時間が幸せ…。…許される限り、一緒に居たい。そのためには、御木本さんが求めることにちゃんと応えなきゃ…。……大丈夫。御木本さんのこと大好きだから、次…ちゃんとできる。……大丈夫…。)

まりあは彼の暖かい腕の中でそっと目を閉じ、そう自分に言い聞かせていたのだった。



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