That's because I love you.
(……あんなまりあを見た後だからか?…何か今日、やけに可愛いんだけど…。)

(…いやいや。胸触ったくらいで何だっていうんだよ。そんなことでドキドキするとかあり得ないし、勘違いだろ…。)

軽く咳払いをして誤魔化すと、必死に普段通りの冷静沈着な自分を引っ張り出す。

「…何でもない。水族館なんて久しぶり過ぎて、前行ったのいつだったか覚えてないや。」
「ふふ…っ。私もすっごく久しぶりです~。あのね、すぐ近くに素敵なカフェレストランもあるらしいんですよ~。」
「全くまりあは。そっちの方が楽しみなんでしょ、どうせ。」
「ち、違うもん~っ!ペンギンの行進と熱帯魚も楽しみだもん~っ。」

まりあは笑顔で話していたが、歩き方は少しぎこちなかった。
それに気付かない振りをして駅に向かい、電車に乗る。
電車内は割と混んでいて、二人は車両の端付近に立っていたが、まりあは降りる客にぶつかられよろけてしまった。
明広はそんなまりあの腕を掴むと、壁側に彼女を立たせ、自分は他の乗客から彼女を守る様に前に立つ。

「…大丈夫?」
「…はい…。ありがと…ございます…っ。」

かぁっと一気に顔を真っ赤に染めカチンコチンに体を硬くしてしまうまりあに、明広は内心で苦笑する。

(…さっきも変にぎこちない歩き方してたっけ。僕がこの前"次は抱くから"とか言ったから、今日ヤるとか思ってるかなー…?ずっと緊張させとくのも可哀想だし、安心させとくか。)

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