That's because I love you.

*夜編

ラブホテルの部屋に入ると、まりあは明広に促され、先にシャワーを浴びる。
バスローブを羽織って部屋に戻ると、明広にブラックコーヒーが入ったグラスを差し出された。
シャワーに行く前彼にウェルカムドリンクの希望を訊かれたので、まりあがリクエストしたものだった。

「…これ飲みながら、ソファーで待ってて。」
「…はい。ありがとう…。」

おずおずとそれを受け取り、クッションが沢山乗ったふかふかなソファーに座る。
コーヒーを一口飲むと、ふわっと香り高い苦味が口内に広がった。

(……おいし…。)

ちょびちょびと飲みながら、恐る恐る周りを見回す。
落ち着いた雰囲気の内装の部屋は広く、隅々まで掃除が行き届いていて清潔で、家具やカーペットも高級感溢れるデザインだった。

(…私のアパートの目の前まで行ったのに、こんなに綺麗なホテルに連れて来てくれた…。)

緊張とときめきが一緒になって、心臓がドキンドキンと大きく脈を打つ。
明広がシャワーを終え部屋に戻ってきたのでそちらを見やると、心臓はさらに跳ね上がってしまう。
シャワー後の半乾きの髪にバスローブ姿の彼は、普段よりさらに数倍色気が増していたのだ。

(…ふぇ~…。かっこいいよぅぅ…っ。)

明広の余りの格好良さに半泣きになりながら膝に視線を落としていると、彼が隣に座ってきた。
両手で持っていたグラスをひょいと取り上げられたので驚いて隣の彼を見上げると、彼は勝手にまりあのコーヒーを飲んでいた。

「…うん。美味しいねぇ。」
「…は、はい…。…あれ?御木本さんのドリンクは?」
「僕はノンアルのカクテルにした。冷蔵庫に入れてあるから、後で一緒に飲もうね。」

明広に微笑みながら頭を撫でられ、ときめき過ぎたまりあの顔にはさらに熱が集まってしまう。

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