That's because I love you.
前回の冒頭優しく出来なかったことを後悔していた明広は、今夜は彼女をきちんとリラックスさせてやりたいと考えていた。
急な誘いを承諾してくれた彼女に、感謝していたというのもある。
小さな体を抱き締めると、優しい言葉を慣れないながらも懸命に考え、紡ぐ。

「…まりあ。本当に怖くない?」
「……、だいじょぶ…。」
「…僕こんなんだけどさ。今夜はさすがにちゃんと優しくするよ。…まりあの初めてだし。」
「…はい…。ありがと…ございます…っ。」
「まぁ処女相手にするのとか僕も初めてだし、その…さ。痛かったりこれは嫌だとかあったら、すぐ教えてよ。」
「…はい。御木本さん…優しい。ありがとう…。」

涙を滲ませふにゃっと力が抜けた様に笑うまりあに、明広はきゅんとときめく。

「…僕のこと優しいなんて言うの、まりあだけだって。前から訊こうと思ってたけど、なんで僕なんか好きなわけ?」
「…あの…。御木本さんは覚えてないと思うんですけど…えと、重いって引かれたくなくて、今まで言えなかったんですけど…。」

まりあは少し迷ったが、優しい明広を信じ、7年前の大事な思い出を彼に話した。

「…あの時、本当にありがとうございました。御木本さんの言葉のおかげで、私あれからもくじけずに頑張れたんです。…私あれから…ずっと御木本さんのこと…。」
「…………。」

明広は自分の中にあった少しの期待が現実になったことで、高鳴る鼓動の中言葉を無くしていた。

(……あの時の子はやっぱり、まりあだったのか…。ずっと…7年も、僕を想い続けてくれてた…。)

胸に広がる気恥ずかしさを抑え、普段通りの落ち着いた声色を何とか捻り出す。

「…覚えてるよ。自販機でカフェオレ買ってあげたら大袈裟に喜んでた…あの子でしょ。」
「…ふぇ…っ!?お、覚えててくれてたんですか?私あの時、初めてカフェオレ飲んだんです。それからコーヒーが大好きになって…。」
「コーヒーも僕がきっかけなの?全く君は…。」
「ぁ…私、重いですよね…っ。華ちゃんにも…お友達にもそう言われて、ご、ごめんなさ…。」
「…違うよ。本当に純粋なんだね、まりあは。…僕とは正反対だ。」
「…ぇ…?」

まりあがおずおずと顔を上げると、明広は優しく微笑んでくれていた。

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