That's because I love you.
明広は幼少期に両親に捨てられ、実父の友人の男に預けられた。
その特異な生い立ちのせいで幼少期は周りの子どもに散々からかわれ、虐められた。
大人からはゴミを見るような目で見られ、中傷された。
周りから自分を守るため、またやられたらやり返すため、合気道と空手を始めた程だ。
何でもそつなくこなす明広は武道もすぐ極め、それからは皆怖がって近付かなくなったが、今度は完全に孤立した。
育ての親が人情に厚い暖かい人物だったことで非行には走らなかったが、育ての親の男以外の全ての人間を信じられずに過ごしていた。


公園で泣いていた少女に声を掛けたのは、声を押し殺して泣くその姿が、自分の内心と重なったからだった。
話してみるとその少女は、自分と境遇が似ていた。
優しく思いやりがあり、可憐な笑顔が可愛いその少女と話すうち、明広は初めて他人に心を開き、淡い恋心さえも抱いていた。
しかし、彼女と会えたのはその一度きりだった。
暗い子ども時代を過ごし、その後の人生でも周りの人間に恵まれなかった明広は人間不信をさらに募らせ、性格は歪んでいくばかりだった。


女遊びはそれなりに良いストレス発散になったが、少女に抱いた様な恋心は、他のどんな女性にも抱くことが出来なかった。
少女への気持ちを引きずって恋が出来なかったという訳ではなく、単に、他の女性達には全く心が動かされなかったのだ。


大学三年になって出会ったまりあは、そんな自分が不思議と優しくしてしまう、可愛いと心から思ってしまう女の子だった。
そのまりあが、あの時の少女だった。
まりあは7年前からずっと、自分を好きでいてくれたのだ。
"重い"などというマイナスな感情は微塵もなく、明広はその事実がただただ、感慨深く嬉しかった。



(…まぁ…ここまでスレた今は、もう恋なんて出来る気はしないけどな…。)

明広は確かに、まりあを大事に想ってはいた。
しかし彼は、それを恋愛感情と認められてはいない。
ーーーそれは明広の中では、"自分に懐いたペットを可愛がる"意識だった。



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