That's because I love you.
明広はまりあを休ませている間に、バスルームに向かう。
洗面台の上に泡風呂入浴剤があったので、バスタブに湯を溜める際にそれを入れた。
明広は「一緒に入る?」と誘ったが、まりあにはまだハードルが高かったらしい。
「いえ、あの、恥ずかしいので交代で」と例の如く茹でダコ状態のまりあに断られ、また「もう少し休みたいので先に入ってください」と言われたので、明広が先に風呂に入った。
交代でバスルームに向かったまりあがほかほかと温まった姿で部屋に戻って来ると、二人でソファーに座り、ウェルカムドリンクのノンアルコールカクテルを飲む。

「わぁ…。カクテルなんて初めて飲んだけど、すごくおいしいです~。」
「…それはよかった。」

まりあは少し疲れてはいる様だったが、ふにゃっとした幸せそうな笑顔を浮かべていた。
自分の隣でちびちびと味わう様にカクテルを飲むまりあがやけに可愛く見えて、明広は無意識に見とれてしまっていた。

(……何か…離れたくないかも…。)

閃いた明広は、さらりと切り出す。

「…今日さ、泊まってく?」
「…ふぇ?」
「備品も揃ってるから大丈夫でしょ。夕ご飯はルームサービス取ればいいし。」
「…いいの…?」
「うん、明日のバイトは午後からだし。…まりあ体つらそうだし、今歩かせたくないしさ。毎回は無理だけど、今日は朝まで二人でゆっくりしようよ。」
「……っ…。」

初めての自分のために綺麗で広いホテルを選んで連れて来てくれ、情事中ずっと優しくしてくれ、その上朝まで一緒に居てくれる。
明広の優しい気遣いに、まりあは幸せ過ぎてキャパオーバーになり、また泣き出してしまった。

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