That's because I love you.
「…また泣くし。」

予想以上の反応に、明広は思わず苦笑する。
震えながら泣くまりあの頭を撫でながら、からかう様に言う。

「喜んでくれると思ったんだけどなー。そんなに帰りたいなら帰ろうかー。」
「帰りたくないです…っ!!みき…明広さんと一緒にごはん食べて、一緒に寝たいです…っ!」

きっぱりと言い切るまりあに明広は満足そうに微笑むと、彼女の肩を優しく抱く。

「この部屋のベッド広くてよかったよね。二人で寝ても窮屈じゃない。」
「…はい。はぁい…っ!」
「ルームサービスのメニューこれだよ。何食べる?」
「ふぁ…おいしそう…。まぐろアボカドごはん…。」
「ねぇ、いつになったら涙止まるの?」
「ごはん食べ始めたら多分止まります…っ。」
「…ご飯来るまで泣いてるんだ。」

フロントに宿泊に切り替える旨を電話するついでに夕食を頼み、運ばれてきた夕食とまりあが持ってきたお菓子を一緒に食べ、テレビを観たりスマホを弄って寛いで、二人で早めにベッドに入る。

「明日の朝は星乃珈琲のモーニングでも食べに行くー?」
「わぁぁ…。あそこの珈琲美味しいから嬉しい~。朝から何か贅沢ですね…っ。」
「まりあの贅沢はお手軽でいいねぇ。」
「むぅ~、だってほんとに嬉しいもん~。ありがとう、明広さん…っ。」

まりあは隣に横になる明広に少しだけ身を寄せ、暖かい布団の中でそっと目を瞑る。

(…明広さんが私に特別な感情を持っていないのは、わかってる。…それでも本当に幸せなの。ずっとずっと好きだった明広さんと一緒に居られる…優しくしてもらえる、…それだけで…。)

まりあの初体験の夜は、これ以上ない程幸せな一夜であった。
心から安心した様な表情で眠りについたまりあの髪を、明広は無意識に、大事そうに優しく撫でていた。



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