俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「わ、わたしはダンスが得意ではないので…」


「それは残念。踊ってもらおうかと思ったんだがね」


「…すみません。他を当たっていただけると、」


「ははは、まさか断られてしまうなんて」



こんなところを先生に見られたら怒られるどころの騒ぎじゃない…。

というより、わたしに声をかけてくれる人がいるほうが驚きだ。


メイクしてるから…?

これもハヤセの力だっ!と思いつつ端に立っているタキシードへ、クルッと振り返ってみる。



”エマお嬢様、あちらにお逃げください“



小さな小さなジェスチャーと口パクは、人が少ないゾーンを指差してくれた。

すぐにコクンッとうなずいて、男を振り切って、ハヤセの言うとおり───



「おや、どこに行くんだい?」


「わっ!」



には、ならず。

ガシッと腕が掴まれてしまいまして。



「あっ、えっと、わたしお手洗いにっ」


「そう言って僕から逃げる気なんじゃないか?」



……そーだよ大当たりだよ。
わかってるなら離してくれませんかっ!!

というか、どうしてわたしなんかに執着するの?周りにたくさん可愛い子いるのに…!



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