俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「───風邪を引いてしまいます」


「っ!」



ふわっと、わたしを隠してくれるようにフローラルの匂いに包まれた。


彼はジャケットを脱いだベスト姿になって、同じように隣にしゃがむ。

こうしてわたしがいつもクロとシロに話しかけていると、覗き込みながら微笑んでくれていた。


けれど、今日はちがう。



「…帰りましょう、エマお嬢様」



ハヤセは笑ってない。

でも怒ってもなくて、呆れてもなくて。



「ハヤセ濡れちゃうよ」


「俺は平気です」


「冬だよ、2月だよ?さすがに平気な人はいないって」



いっぱい走ったから髪が崩れちゃった。
きっとメイクも涙で落ちちゃってる。

わたしはやっぱり、こんなふうに綺麗にしてもらっちゃだめなんだよ。


破壊神だから自分のことまで壊しちゃう。



「ハヤセ、猫って冬はどこで過ごしてるの?クロとシロは大丈夫かな?ちゃんと暖かい場所にいるかな?」


「…どうしてあなたはそんなに周りのことばかりなんだよ」


「え…、そうでもないよっ。むしろ周りに迷惑ばかり───」



気づけば腕の中。

きつくきつく抱きしめられている、腕の中。



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