俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
優しく温かい眼差しで見上げ、左手を差し出してくる。
「Una giovane donna adorabile. Ti piacerebbe ballare con me?」
うん……完全に分からない。
なんて発音が良いんだろう。
絶対イタリア語だ……まったくわからない。
でもたぶん…俺と一緒に踊ってくれませんか───的なことを言ってるんじゃないかと雰囲気で察する。
「わ、わたしは恵美先生みたいに上手じゃないから。…下手、だから」
「俺がエマお嬢様と踊りたいんです」
「…壊しちゃうよ、伏せてあるグラスとか割っちゃうかもっ」
「構いません」
誰にも誘われなかった。
1人だけいたけど、それは確実にアルコールの力と何か裏があって近づいてきただけで。
純粋にわたしと踊りたいと思って声をかけてくれた人なんかいなかった。
「もうメイクとかぐしゃぐしゃだし…、髪も崩れちゃってる…」
「そのままのあなたがいちばん可愛くて綺麗です」
「っ、…ステップの踏み方とか、」
「俺の言うとおりにしてください、お嬢様」
そんなこと言われたら聞くしかなくなる。
だってハヤセの言うとおりにしていれば大丈夫だってこと、いちばん知ってるのはわたしだから。