俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




ガチャ───。


パンにジャムを塗っていたとき、玄関が勝手に開いてしまった音。

こうして入ってこれるのは執事となった者だけだ。



「樋口…?忘れ物…?」



それかもう新しい代理がきたってこと…?

けれど、目の前に立った男は予想もしていない人だった。



「おはようございます、エマお嬢様」



黒いタキシードを誰よりも着こなして、リボンタイなのがちょっとだけ可愛くて。

朝からこんなにも格好いい人は目の保養すぎて。



「昨日のお怪我は大丈夫ですか?」



怪我…?
わたし怪我なんかしてたっけ…?

あ、昨日の裁縫の授業のときの…?



「あ、うん。ぜんぜん大丈夫…です、」


「安心しました。心配していたので」



いや、あんなの心配するほどのことじゃないのに。

というよりSランクエリートさんのあなたがなぜここに?



「今日はとても天気がいいですよ」


「え…?天気…?」



戸惑っている間にはすでにパンとジャムナイフがスッと取られてしまっていた。

早い、スムーズ、完璧。


柔らかい顔をしながら慣れた手つきでジャムが塗られてゆく。



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