俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
だってわたしが桃を食べるために桃を取ったらだめなの…?
そうしないでどう食べろと…?
思わずコテンと首を傾げてしまうと、やっとわたしの意味しているところが伝わってくれたらしい。
困ったように眉を下げて、また優しい顔。
「お嬢様が手を汚されてしまう。ここは何なりと俺を頼ってください」
「え、桃の皮剥いてくれるの…?」
「もちろんです。いつも執事がそうしているはずでしょう?」
「ううん、いつもわたしはぜんぶ自分でやってるよ」
その回答に、彼はもっと驚くように見つめてきた。
「まじかよ」と。
まるでそう言っている顔だ。
「…あのド素人が」
「えっ」
「いえ。今日からは俺にやらせてください」
いやなんか今、一瞬すごい低い声が聞こえたような気がするのですが…。
気のせい?
幻聴でも聞こえたのかな?
そしてわたしの手からサッと滑らかに奪われた、薄ピンク色をした桃。
フルーツナイフを器用に扱う長くて綺麗な指は、気づけばボーっと見惚れてしまうほどだ。