俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「フルーツがいつもそのまま置かれている理由は、直前で執事が切り分けるためなんです」
「なんと!そうだったんだ…」
確かにオレンジもメロンも、いつもそのままの姿でカットされずに用意されていたけれど。
でも樋口も今までの執事も、いつも何もしてくれなくて。
当たり前のようにわたしが自力で何とかして食べていた。
「エマお嬢様、手前を失礼いたします」
「えっ、わっ」
桃が均等にカットされると、今度はこれまたどこから取り出したのか不明な食事用エプロンが首元に巻かれていく。
ふわっと見知らぬ匂いは、しつこくないフローラル。
「っ、」
なんかこれって正面から抱きしめられてるみたいだ。
少し触れた髪からもいい匂いだ、なんかもうイケメンが目の前にいる…。
背筋ピーンと、姿勢だけは誰よりも良いだろうっていう自信。
緊張するわたしに気づいたのか、ふっと笑った執事さん。
「…すみません、少し結び直しますね」
「え、」
どうにもここはスムーズじゃなかったみたいで。
うなじで結ばれる純白のエプロンを手にするイケメンに、もう1度ナチュラルに抱きしめられてるわたし。
ぎゅって強いわけじゃなく、触れるか触れないかの、もどかしいふんわり感。