俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
ここで「なにを言っているんだお前は」なんて軽蔑の眼差しが送られたならば、それまで。
「…ですが、実は今日は何も食べていないんです俺」
「えっ、そうなの!?倒れちゃうよ…!」
「ぜひお言葉に甘えて頂いてもよろしいでしょうか…?」
「うんっ!いいよ!向かい側どーぞ!!もちろん誰にも言わないから!」
ありがとうございます、と笑ってくれた。
ちがう、今までと違う。
こんなこと言ってくれる人は1人もいなかった…。
「なら桃だけじゃなくてパンも食べて!いっぱい余ってるのっ!」
「はい、頂きます。ですが俺からは取れないのでエマお嬢様から渡してくれますか?」
「もちろん!あのね、このデニッシュ?すごく美味しかったよ!はいあげるっ」
「ありがとうございます。───確かに美味しいですね、すごく」
「でっしょ!?また作ってもらうようコックさんに頼んでおこうっと!」
こんなに楽しい朝食は初めてかもしれない。
お昼は生徒たちと食べるけれど、静かな中で優雅に食べるお嬢様となんかお喋りできなくて。
甘い果実の誘惑に負けて頬張るわたしをじっと見つめてくる目も、今までの執事とはぜんぜん違った。