ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「これって、なにか薬……」

 口を開いたとたん、小瓶が動いて液体が口に流れ込む。

 ゔぐーーッ!

 入った瞬間から、苦みとまずいのが一気に押し寄せて来た。吐き出そうとしても、口にチャックをされたように開けることが出来ない。

 これまでに、経験したことのないくらいの強烈な苦味だ。

 ようやく飲み込んだ目には、涙がたまっていた。

 まだ唇の上下はくっついたままで、手でこじ開けようとしてもビクともしない。

「んッ、んんーーッ!」

 口元を指差しながら、必死に訴えかける。
 早く何か飲ませて!

「んんーッわぁッ! はあッ……」

 ふいに口のチャックが解けて、声が飛び出した。

 ケホケホと咳き込みながら、喉を押さえる。死ぬかと思った。

「ちょっと……、これ、何なの?」
「もう苦味は治まったじゃろ」

 言われてみれば、たしかに喉がもげそうな味はなくなっていた。

「この薬はまともに飲もうとしても無理じゃ。たいていの者は、苦味と(かわ)きで水を求める」

「どうして水を飲んだらいけないの?」

 ルキくんと私を木の椅子へ座らせると、これはもう何百年も前の話だと、モラナがゆったりと語り始めた。
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