ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 なんとなく視線を感じて振り返る。その先に、芦屋さんが仁王立ちしてこちらを見ていた。笑顔なのに、目が笑っていない。

 ランチを運びながら、ずんずんと向かって来る。

「ご、ごめん優希ちゃん。やっぱり、うちら向こうで食べるね」

 二人が足早に去って行くのを見て、芦屋さんは笑みを浮かべながら私の横を通り過ぎて行った。

 可愛い顔なのに、無言の圧がある。

「優希ちゃん、私といると友達なくすかもしれない」

 ぽつりと、心の声がもれていた。

「笑里ちゃんって、この辺りを取り仕切ってる家の孫なんだ。だから、みんな怖くて逆らえないんだよ」
「……だったら」
「でも、あたしは嬉しかったんだ。樹里ちゃんが白川村に来てくれて。友達になりたい」

 ああ、なんていい子なんだろう。
 世界中が優希ちゃんみたいな子だったら、救われる人が増えるのに。

 ランチを取りに行こうと席を立つと、斜め前から視線を感じた。少し離れたところに、ルキくんが座っている。

 吸い込まれるように、バチッと合った目が離せない。

 なんだろう、これ。体がビリビリしてる。

 そのとき、腰をつんと突かれて、「ふわぁッ!」と変な声が出た。
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