ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「あの丘にある森には、悪魔が住んでるって話」

 丘って、おばあちゃんの家があるところのことだよね? ごくりと喉を鳴らして、思わず。
「……ア、クマ? 熊じゃなくて?」と聞き返していた。

「昔、悪事を働いた村人が天罰をくらって、悪魔の姿に変えられちゃったらしい。それで、あの森に追放されたとか」

 くわっと牙を突き出す鬼の真似をしている。
 冗談……ではなさそうだ。そんな迷信みたいな話を信じてるの?

「けっこう有名な話だから、白川村(ここ)には誰も寄り付かないんだ。で、こっからが肝心なんだけど、その悪魔はーー」

 より小さな声で、優希ちゃんが耳打ちしようとしたとたん。パリンッと大きな音がして、見ると目の前の皿が割れていた。

 食堂がざわめき出す。落としたわけでもないのに、突然何が起こったの?
 気が付くと、ルキくんとノエルくんが私たちのテーブルの前に立っていた。

「大丈夫? 怪我、してない?」

 きらきらした笑顔で、ノエルくんが私の手を取る。
 うわっ、初めて男の子に手を触られた!

「だ、大丈夫……です」

 パッと引っ込めると、ノエルくんが唇に人差し指を立てながら、優希ちゃんにクスリと笑う。

「その話、二度としないでね」

 それだけ言って、二人は食堂を出て行った。ただ隣で見ているだけで、ルキくんは黙っていた。なんだったんだろう。

「樹里ちゃん、どうしよう。ノエルくんに話しかけられちゃった」

 さっきまで驚いていた目が、ハートになっている。

 二度と話さないでって、言い伝えのことだよね?
 そんなことはすっかり忘れたように、優希ちゃんはうっとりしている。
 周りの女子たちも、彼らの後ろ姿に甘いため息をこぼしていた。

 黒羽兄弟って、他の子にはない空気を持った人たちだなぁ。

 割れたお皿が、より不思議さを残していた。
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