ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 覆っていた葉の中から、1件の家が現れた。有名なドイツのお城のように幻想的で、どこか惹き付ける雰囲気を持った屋敷。

「お父さん、あれ何? 誰かの家かな?」

 ドコンッと車が跳ねる。

「おわっと、今ちょっと見れないな」

「お姉ちゃん、ほらあの右の白い……」

「どれどれ? どこに家があるの〜?」


 一瞬目を離したうちに、白い建物は見えなくなっていた。また木に隠れちゃったのかな。

 もし誰かの家だとしたら、どんな人が住んでいるのだろう。

 そのまま前を向いて、到着するまでのしばらくの間、そっと目を閉じていた。

 家に着いてすぐ、おばあちゃんが出迎えてくれた。年期の入った小さな家は、やっぱり洋風で可愛らしい。

「樹里、見て! 下の方に家がいっぱい〜」
「うわぁー、素敵……」

 丘の下には、緑や赤の屋根とレンガの壁がずらりと並んでいる。

 今まで住んでいた街とは、まるで別の世界。
< 3 / 158 >

この作品をシェア

pagetop