ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「襲ったりなんかしない。信じなくていい」

 伏し目がちに言うと、イリヤくんはまた口をつぐんだ。
 どういうこと? あきらかに動揺した態度。なにか詳しいことを知っているような。

「……ごめん。じゃあ、またどこかで」

 それ以上は何も聞けなくて、背中を見送ると玄関のドアを閉めた。

 信じなくていいって、あの伝説は間違ってるの?

 でも、どうしてイリヤくんが必死に否定したのだろう。
 まさか、関係がある……とか。まさか、ね!

「今のだれー?」

 いきなり背後から飛び付かれて、身動きが取れなくなる。ニヤついた声で、お姉ちゃんが何度も繰り返す。

「誰でもいいでしょ? 降りてよ〜重いんだから」
「カッコいい子だったじゃん。もしかして、彼氏?」
「そんな人いません!」

 おぶさっているお姉ちゃんを振り払って、逃げるように階段を駆け上がった。

 面白がって、すぐからかうんだから。

 部屋のベッドに寝転んで、もらった袋を開いてみる。

 透明感のある水晶のかけらみたいなものが入っていた。キャッチのないピアスのようにも見える。

「これ、なんだろう?」

 白い文字が刻まれているけど、小さすぎて何と書いてあるのか読めない。
 片耳だけ……ペアでプレゼント?

「いやいや、ありえないよね」

 ふう、とため息を吐いて、そのきらきらした物をもう一度袋へしまう。

 ごろんと寝返りを打ったとき、窓の枠からこちらを見ているカラスと目が合った。

 えっ、なに?
 部屋の中をのぞいているように見える。じっと、私の持つ白い袋に視線が定まって動かない。

 なんだか怖くなって、シャッとカーテンを閉めた。
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