置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
翌朝、なんで昨日あんなにいいがかりをつけられたのかわからないまま朝食の会場に向かった。
すでにテーブルにつきコーヒーを飲みながらスマホを見ている加賀美くんの姿は朝から絵になる。
そんなことを入り口で考えていると、私に気がついた加賀美くんが手を上げて合図した。

私がテーブルに向かうと爽やかに挨拶をしてきた。

「おはよう。よく寝れたか?昨日はごめん」

「おはよ。私の方こそごめんね」

「さ、朝ごはん食べるか。また今日も忙しくなるぞ」

「まだ食べてなかったの?」

「あぁ、槇村もそろそろ降りてくると思ってたからさ」

「ごめん、遅くなって」

「いや、ちゃんと時間決めてたわけじゃないからいいんだよ」

加賀美くんは立ち上がると2人でトレイを持ちバイキングの朝食を取りにいった。
沖縄ならではのもずくの料理や島豆腐などが並ぶ。

「私、バイキングって良し悪しだと思うんだよね。好きなもの取れるけど席も決まってないから探さないといけないし、取り忘れるとその都度立ち上がるから落ち着かなくない?」

「そうだな。何かを忘れるたびに、また料理をとるたびにみんなが立ち上がるから落ち着かないかもな。落としたりする確率も上がるしな」

「でも人員的には少人数で助かる。けどフードロスはある。難しい問題だね」

「それはそうと今日は街中を見て回ったり観光地巡りだったよね。観光客みたいで嬉しい」

「仕事で遊べるなんて最高だな。とりあえず王道の竹富島にちょっと行ってみよう。そのあとは戻ってこっちでの楽しみ方を探そう」

昨日のわだかまりは解けて私たちは企画の草案になるような物を見つけるべく今日は楽しむことにした。
食後すぐに荷物をまとめフロントへ預けると石垣港に向かった。
ここから竹富島へはフェリーですぐに着く。
石垣港には朝から家族連れが多く石垣島から一歩外に出る人の多さに驚くが、それだけ島めぐりに興味があるのだろう。
ここからは竹富島だけでなく西表島や波照間島、小浜島など多くの島に向けた拠点になっている。竹富島は近いから行きやすいが他の島にも行ってみたいと興味をそそられる。

フェリーのチケットを買いに加賀美くんが離れて行った。

ふと目にしたポスターに私は魅入ってしまい目の前で足を止めた。
数枚のポスターには風景がメインで端のほうに説明が書かれていた。

【日本の有人島として最南端の島であり、南十字星が見える島】
【波照間ブルーといわしめるほどの澄み渡る海。珊瑚に溢れる海中を覗きに来てください】

「一度でいいから波照間島に行ってみたいな」

そんな心の声がつい漏れてしまった。
するといつ戻ってきたのかわからなかったが後ろから声がした。

「すごい写真だな」

振り返るとチケットを手にした加賀美くんが立っておりポスターを見ていた。

「すごいね。これを見せられたら行きたくなるよ。惹きつけられてしまうよね」

「本当に。南十字星が見えるなんて信じられないな」

2人でポスターの前に立ち尽くしてしまった。
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