置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
「あ、マズイ。時間だ!」

加賀美くんに言われハッとした。
慌てて私たちはフェリー乗り場へと走って向かった。
余裕があったはずなのに私が立ち止まったせいでぎりぎりになってしまった。

「ごめんね、走らせて」

「いや、おれものんびりしちゃったからさ」

フェリーの中で隣同士に並ぶと竹富島で何をするかガイドブックを身始める。

「水牛にのったあとサイクリングが王道らしいな」

「そうみたいだね。フォトジェニックな場所探ししてみようか。旅行に写真はつきものだし」

加賀美くんは頷くとガイドブックに視線を落とした。

フェリーに乗ること10分少し、竹富島に到着した。
港には沢山の小型バスが停まっており予約しなくてもどんどんと水牛に乗る案内所へと連れて行ってくれた。ここに来る人はみんなこれに乗りにきてる言わんばかりで流れ作業のように連れて行かれた。
料金を払い水牛に乗ると街中の散策が始まる。牛車の中では沖縄民謡流れており、この音楽の中昔ながらの石垣の間を通ると観光客としてはとても楽しい。
けれど…所々に観光反対と書かれているものを見かけ、ここにきてはいけなかったのかもと思ってしまった。この街並みは住民の住まいでもあるということを忘れていた。庭先に洗濯を干している人もいた。その人たちにとって観光客の目に晒されているこの環境はどうなんだろう。知らない人たちが毎日たくさんの数来て、住まいを覗き込まれている。
観光としてはとても素敵だが住民のことを考えると肩身が狭くなった。

水牛に乗り終わったあとなんとも言えない気持ちになったが加賀美くんには伝えることができずにいた。

そのまま自転車をレンタルして星の砂の海岸まで行くことにした。
自転車にのり風を切るのが気持ちいい。
暑いけれど乾燥しているからか東京の夏とは少し違う。潮風に誘われるように浜辺に出ると星の砂を探すが見つからない。星の砂と看板さえ出ているというのに砂をかいて探すがわからない。

隣に来ていたツアーガイドが手のひらにつけてみてください、と案内していた。
私たちも聞き耳を立てて言われたようにやってみると手のひらにたくさんの星の砂がついていた。

「あった!!!」

「本当だな。掘って探すものじゃないんだな」

せっかくの記念なので私はティッシュに包んで持ち帰った。

帰り道、海を眺めながらゆっくりできるカフェを見つけ2人で冷たい物を飲んだ。

「なんかね、さっきちょっと思うことがあってさ。竹富島は観光があるから成り立つ部分もあるけど住人にとっては迷惑なこともあるんだよねって思ったの。もちろん生活のため仕事も必要。でもプライバシーも守られないといせないよね。毎日他人がうろうろしてたら落ち着かないだろうなぁって感じちゃったの」

「槇村が言ってることわかるな。物珍しいから観光客は見たいと思うんだろ。でもさ、よく考えるとそれは迷惑なことでもあるよな。昨日の三線のライブもだけど観光客は沖縄独特の文化に触れたいという気持ちからなんだよな」

「みんなが沖縄旅行に求めるものって沖縄独特の文化に触れたいのと海だよね。ホテルで沖縄文化に触れられることを考えていきたいな」

「そうだな」
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