置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
車をパーキングに止め、ヘルメットを被りホテルへ入ろうとするがここでも梨花ちゃんは難色を示す。

「ヘルメット被らなくても大丈夫です」

「被らないと入れないぞ」

「でも被りたくないです」

今日の梨花ちゃんはいつもより手の込んだヘアスタイル。ゆるく編み込みをしたものをサイドへ流している。とても可愛くて似合っているが確かにヘルメット被ったら取る時にゆるく編んでいる分、乱れるだろう。

「梨花ちゃん、仕事だからね。被らないと入れないんだよ」

私が諭すが首を振る。

「おい、竹内。仕事だって槇村さんも言ってるだろう。早くしろよ」
 
「嫌だってば。髪型崩れるじゃん。被らなくても大丈夫だから!」

大介くんも諭してくれるが梨花ちゃんは聞かない。

「山口、槇村。中に入ろう。竹内はここで待ってろ」

加賀美くんはそういうとヘルメットを被り先を歩いていった。
私と大介くんは慌ててヘルメットを被り追いかけていった。
梨花ちゃんも追いかけてくるが「お前は入れない」と一言だけ言うとそのまま振り返ることなくホテルへ入っていった。

加賀美くんはもう中に入ってしまったため私と大介くんは梨花ちゃんを置いてホテルへ入った。

この前とは変わり、扉などは全て取り外されている。仕切られていたものも外されており解放感のある広さが際立っていた。

「加賀美くん!思っていたよりも広かったんだね。壁がなくなって広くなったね」

私は興奮気味に話しかけた。

「本当だな。狭いフロントに辺なロビーだと思っていたけど開放的になったな。楽しみだな」

2階も昔ながらの宴会場は跡形もなくなり壁紙も剥がされコンクリートが剥き出しになっていた。2階は一部吹き抜けにする予定で床に穴が空いていた。
こんなことをして大丈夫なのか不安になるが強度は問題ないと言う。それに念のため補強工事も行われることになった。
今よりも開放感のあるインパクトのあるエントランスにしたかった。これは企画戦略室の一存だった。
だいぶ金額がかかるが他社よりも目を引くインパクトのあるものにしたかった。
前回宿泊したホテルはエントランスが抜け正面に海が見えていたがここはすでに食堂だったところから海が見える窓がある。それを最大限に活かす。そして天井も抜けたら相当な開放感になるだろう。
エントランスから入った時の開放感が今から楽しみなところである。

そこかしこで重機の音が鳴り響き、埃が立っている。
上階では水回りの交換も行われているはず。
上へ上がろうと階段へ向かうと梨花ちゃんがヘルメットを被りやってきた。

「すみませんでした」

加賀美くんに頭を下げてきた。
小さな声で謝罪する梨花ちゃんに加賀美くんは頷くが声をかけることはない。 
梨花ちゃんの目は潤んでいて今にも涙が溢れそうだった。
でも今回は仕事できてるのにヘルメットを被りたくないから入れないのは話にならないし、ここで甘い言葉をかけるのも違うと思う。
私も梨花ちゃんをフォローするような言葉をかけることなく、でも仕事だからと割り切って接することにした。

ようやく4人で回り、全てのチェックを終えた。
改めて設計図と見合わせ、さらに必要そうなものをリストアップした。

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