置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
明後日、インテリアデザイナーと合流し打ち合わせの予定。
そのため今日、明日とホテルでのイベントやアクティビティに協力してもらえそうなところをいくつか周り打診することになった。

琉球ガラスを作れたらいいな、と私は密かに思っていた。琉球ガラスのトンボ玉やサンキャッチャーを作れたら楽しいんじゃないかなと思っていた。ほたる玉も有名だからそれでブレスレットを作ったりしたらいい思い出になるんじゃないかと思っている。その日のうちに仕上がるものは子供たちの夏の工作にもいいのではないかと思っている。

加賀美くんはカヌーやsupをやっている業者との提携を考えている。子供たちのために1日アウトドア体験やマングローブの生き物を勉強してもらったり出来る。大人はヨガなども取り入れていくことができるだろう。

大介くんと梨花ちゃんもナイトツアーを検討してきている。夜の生き物や星空を中心としたアクティビティ。

それぞれ調べ上げた石垣島での楽しみ方。

みんなホテルを成功させたいのは同じ。

でも……

「明日竹内は東京戻って」

加賀美くんはホテルの視察を終えると梨花ちゃんにそう告げた。

「待ってください。なぜですか?さっきのことなら謝りました」

梨花ちゃんは今にも泣きそうになりながら加賀美くんに詰め寄った。

「それだけじゃないだろ。他に思い当たることはないのか?今回本当は連れてくるつもりはなかった。でもどうしてもというから室長に言われ連れてきたが竹内の行動を見ているとやはり連れてくるべきではなかったと思う。竹内にはまだ早い。室長には俺から話しておくから明日の便で帰れ」

「待ってください。何がいけないんですか?ナイトツアーも山本くんと考えてきました。私にもやらせてください」

「これは遊びじゃない。旅行で来てるわけでもない。山本とナイトツアーを考えてくれていることはわかっている。けど山本はそれ以外にも手を伸ばしリサーチしてきてる。俺や槇村の手伝いや田代さんの仕事にも入っているから大部分の把握ができているが竹内は違うだろ。下調べくらいしてからくると思っていたが何もしてきていないだろう。何も分かってないじゃないか」

梨花ちゃんは加賀美くんの勢いに言い返すこともできなかった。

私から見ても梨花ちゃんは加賀美くんの仕事しか見ていない。私の頼んだ仕事はおろそかになるから最近は頼めずにいた。その分大介くんは頼んだこと以上のことをやってきてくれる。痒い所に手が届くような仕事ぶり。最近際立って他の社員からも評価が高い。
梨花ちゃんは加賀美くんの仕事ばかりで、私だけが目の敵で仕事がおそろかにされていたが最近は他の仕事もおざなりになってきている。でもここに来たいから頑張っていると思っていた。
しかしさっきホテルに入ると驚くほどに無知だったことを思い知らされた。汚いとか散々なことを口にして前向きな意見はなく、また設計図や完成図を見ていないはずはないのに穴が空いてるという。空いてるのではなく空けたのに。
正直、私も加賀美くんのいうことに間違いはないと思った。
遊びで来たわけではなく仕事なのにわがままが過ぎるとも思った。

「どうしていつも槇村さんばかり優遇されるんですか?結婚相手に捨てられたからですか?だから加賀美さんは槇村さんに優しくしてるんですか?気を遣ってあげるんですか?私だって加賀美さんの役に立てるよう頑張ってるのに」

泣きながら梨花ちゃんがそういい始め、私は驚いた。
梨花ちゃんのいうように私はこんなことになったからこの仕事を任されたのかもしれない。それに加賀美くんに色々な面でフォローされている。人からもそう見られていたことに恥ずかしく思った。自分では頑張ってるつもりでも他人からは可哀想、と同情で仕事を任されてると見られていることに気がついてしまった。そんなふうに思われていたんだ。

「竹内、何言ってるんだよ。槇村さんは違うぞ」

大介くんがすぐに梨花ちゃんに言い返してくれた。

「ほら、大介くんだって槇村さんを庇うじゃない。同期の私には優しくないじゃない。大介くんだって槇村さんが好きだから手伝ってるんでしょ?私だって加賀美さんが好きだから手伝うの。大介くんと同じじゃない。何が悪いのよ」

「俺は私情を挟んでない。後輩として手伝ってるし、何より槇村さんの仕事ぶりは勉強になるから。槇村さんの視点で企画を考えるのが面白いから」

「なんなの?みんなで槇村さんの味方して私が悪者なの?」

ここで加賀美くんが口を開いた。

「竹内。槇村は同情で仕事をもらってない。お前だって本当は分かってるんじゃないのか?それをわざと相手が傷つくようにいうのは間違ってるぞ。槇村は男の俺と肩を並べて頑張っている。あいつが企画を出してくるから俺が意見をいえる。俺が考える企画は面白みがないがあいつの視点で見ると面白いものが出てくる。だから俺らはペアで組まされる。俺は槇村がいないと企画も通らない。でもすぐに槇村だって考えられるわけではなく膨大な量の資料を漁り、リサーチを重ねている。でも竹内は俺だけの仕事しかしていないよな。自分から何かしようと考えてないよな」

梨花ちゃんは黙り込み、鼻をすする音が聞こえてくる。

私も梨花ちゃんから同情で仕事をもらえていると言われ顔を上げられずにいた。加賀美くんの言葉を信じたいが多くの人から同情されていると思われてるのかと思ったら堂々としてきた自分が恥ずかしくなってきた。滑稽に思えてきた。選ばれたと思っていたのは自分だけで周囲の目はそうではなかったのだと思い知らされた。
私はもう何も言えなかった。

「竹内、謝るべきだぞ。槇村さんはこの仕事にどれだけの力を注いでいると思ってるんだ」

大介くんの言葉に、梨花ちゃんの嗚咽が漏れ聞こえてくるが私は呆然と立ち尽くしてしまう。

「竹内がどう思っても俺は槇村の仕事を認めているから。だから謝らなくてもいい。ただ、チームの輪を乱すことは許さないし、このプロジェクトを知らなさ過ぎることも論外だ。部長に行って竹内には下りてもらう」

梨花ちゃんの嗚咽がさらに大きくなった。

「すみませんでした」

それだけ小さな声が聞こえてきた。
私たちは車に乗り込み今日宿泊するホテルに向かった。
遅くなってしまい今日行きたかった予定の工房にいけなくなってしまった。

後部座席でまだ嗚咽を漏らし泣いている梨花ちゃんを誰も声をかけられずにいた。
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