置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
月曜日。

いつものように出勤すると駅で加賀美くんと合流する。
初めの頃は偶然と言っていたが今となっては待ち合わせのようだ。
まだ社内のエントランスを抜ける時の視線が気にならないと言ったら嘘になる。体がこわばるのを感じる。
それに気がついた加賀美くんはあの日から欠かすことなく毎日一緒に出社してくれている。

企画戦略室に着くと既に大介くんが来ていた。

「おはようございます!槇村さん、土曜日楽しかったです。またご一緒させてくださいね!写真もよく撮れていたから後でスマホに送っておきますね」

「あ、ありがとう」

私はそれだけ言うと席に着いた。
隣の席の加賀美くんからの視線を感じる。
ちらりと目を向けるとやはり私の方を見ていた。

「山口とどこか行ったの?」

「え?うーん。約束してたわけじゃないけど一緒に何軒かホテル巡りしてきたんだよね。リサーチする話を金曜にしたからかな。現地で会ったの」

「ふーん」

それだけいうと顔をパソコンの方に向けてしまった。
なんだか怒っているような冷たい声だった。

私は居心地の悪さを感じながら仕事に取りかかった。

お昼になり梨花ちゃんと外へ食事に出ようとすると大介くんも付いてきた。梨花ちゃんとは石垣島でのことがあってからとても距離が縮んだと思う。なんでも私に話してくれるようになり妹のようなつきあいができるようになった。梨花ちゃんも私に気を遣ってよく外での食事に付き合ってくれるようになった。
大介くんは私たちが出るのをみて時折ついてくることがあったので今日も3人で出かけようとしていたら加賀美くんに呼び止められた。

「俺も行く」

4人で行くことはほぼなくて、石垣島以来。私と加賀美くんは出かけることがあっても加賀美くんが2人と行くのはみたことがない。
珍しいな、と思うけど加賀美くんが行きたいのなら、と一緒に出かけることになった。
加賀美くんはもちろん、大介くんも高身長に爽やかな笑顔で社内の人気は高い。その2人に加え可愛い梨花ちゃんといるととても目立ってしまう。
良くも悪くも私も今は目立つ存在。
目立ちたくないから食堂に行かず外で食べているのに、と俯きながらエントランスを通り抜けようとする。すると、すっと私の隣に立ち私を壁際にしてくれようとする加賀美くんを遮るように大介くんが私の隣に並んできた。そして俯いている私の顔を覗き込むようにして話しかけてきた。

「槇村さん、悪いことはしてないんですから堂々としていましょう。槇村さんは悪くない。俺らいるんだから怖いこともないですよ。俺は裏切りません」

私に、逃げてばかりいてはダメだ、と言っているんだと思った。隠れていてはみんなからの噂のネタにされてしまう。悪いことしてないだから胸を張れ、と年下の大介くんに諭された。それに土曜と同じことを言われた。

【俺は裏切らない】

この言葉をまた言われた。
私にとってこの言葉の重みがどれほどか大介くんは知ってるのかな。
私の味方だと宣言してくれるこの言葉に勇気付けられる。

私は大介くんに言われた言葉で胸が温かくなってきた。
この半年間、ずっと俯いてきたけど私がどうして俯いて歩かなきゃならなかったんだっけ?とふと思った。
私は悪くない。
陰口を言われなければならないこともしていない。
私は大介くんに言われやっと顔を上げられた。
この4人でいると加賀美くんや大介くんの格好良さや梨花ちゃんの華やかさで目立ってしまうけれどもう気にしたくない。
久しぶりに顔を上げ、エントランスをとおりぬけることができた。
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