嘘は溺愛のはじまり
それから一ヶ月後。
彼女のアパートの退去直前に、たたみ掛けるように、俺は次の提案をする。
「部屋が余っているので、下の階が入居できる状態になるまでの仮住まいに使って下さっても結構ですよ?」
この言葉の意味するところに彼女が気づき、慌てる様が可愛らしくて堪らない。
真っ赤になって俯いてしまった。
うん、悪い反応ではない。
少なくとも、怖がらせてはいないだろう。
男性恐怖症ではないかと叔父は言っていたが、それほど重症でもなさそうに見える。
もちろん最低限の心配りはしているつもりだし、これからもずっと気をつけるつもりではいる。
叔父からは『彼女を泣かせるな』と何度も念を押された、もちろん俺だって彼女を絶対に泣かせたくないし怖がらせたくもない。
むしろ、目一杯可愛がりたいのであって……。
交渉の結果、なんとか同居へと持ち込むことが出来た。
俺がこの手の交渉ごとで勝てないわけがない。
彼女も、まさかこんな汚い手を使ってまで同居を迫られているとは思ってもみないことだろう。
ほんの少し良心の呵責を感じるが、無視をすることに決めた。
どうしたって俺は彼女を手放す気はない。
かくして、彼女との同居が始まったのだった――。