嘘は溺愛のはじまり
――とても緊張しているようだけど、嫌がる様子も怖がる様子もなく、彼女はとても恥ずかしそうにしながらベッドに横になる。

とても広いベッドだから、大人が二人寝たところで、端と端で眠れば決して接触することもない。

内心、もっと狭いベッドだったら良かったのに、と思ってしまっていることは結麻さんには内緒だ。


こちらに背を向けて横になっていた結麻さんは、緊張してなかなか眠れないようだったけど、そのうちに眠りに落ちたようだ。

スー、スー、と規則正しい寝息が聞こえてくる。

そっと寝顔を窺うと、いつもより少しあどけない表情で気持ちよさそうに眠っている。


可愛い……。


抱き締めたくてどうしようもなくなったが、そんなことをしたら起こしてしまうし、怖がられてしまう。

俺はぐっと我慢をした。


ベッドのサイドボードに用意していたタブレット端末を手にすると、笹原から来週のスケジュールが送られてきている。

内容にざっと目を通し、既読の表示を付けて、週明け一番の仕事の資料を開いた。
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