嘘は溺愛のはじまり

――暖かい。

なぜだろう、と、まだ半分寝ている頭でぼんやりと考える。


……ああ、そうだ。

結麻さんと一緒に眠ったんだった……。


それも、寒そうに彼女が寝返りを打ったのを良いことに、後ろから抱き締めたまま。


良い匂いがする……。

昨夜は俺と同じシャンプーを使ったはずなのに、全く違う匂いに感じるのはなぜだろう。


まだ起きるには早い時間だ。

リビングの方で何か気配がして、ああそう言えば昨晩は母が泊まったのだった、と思い出す。

結麻さんを起こさないように気を付けて、ゆっくりとベッドから抜け出す。

リビングに母がいて、「邪魔するのは申し訳ないから、帰るわね」と言い残して帰って行った。

冬の日の出は遅いから、まだあたりは真っ暗だ。


寝室に戻ると、結麻さんがころりとこちらに転がった。

まるで、こちらに寄れば暖かいと思ったのにそうでなかったことが不満だったかように、丸くなる。

俺はもう一度ベッドへ滑り込むと、再び結麻さんを後ろから抱き締めて、目を閉じた。

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