嘘は溺愛のはじまり
「今日も素敵ねー、篠宮専務……」
篠宮専務が女性を惹きつける魅力の持ち主であることは重々承知している。
かく言う私も、密かに心を寄せているぐらいだ。
1階の受付にいた女性も、総務部や人事部のフロアにいた女性陣も、篠宮専務が一歩足を踏み入れただけで表情が変わった。
それはもちろん彼が“専務”だからということもあるけれど、きっとそれだけではなくて、やはり少し色めき立ったような気がする……。
「さて、仕事の説明、始めよっか」
「はい、よろしくお願いします!」
野村さんのデスクの隣が、私に用意された席らしい。
隣り合って腰をかけると、野村さんの説明が始まった。
「まず、秘書課には私を含めて5人が在籍してます。これからは若月さんを入れて6人になるわね」
専属の秘書は、社長、副社長、専務、常務にそれぞれ一名ずつ付いていて、野村さんは全ての秘書の取りまとめや、専属秘書のいない役員のスケジュール管理と秘書を帯同する必要がある場合に秘書として同行したりするらしい。
私は野村さんの言った言葉を簡潔にメモを取る。