嘘は溺愛のはじまり
工藤さんはとても仕事の出来そうな見た目ながら、話し方はとてもフランクで、優しそうだった。
“社長秘書”なんて聞くと、仕事にしか興味が無い――みたいなとっても失礼なイメージしか持ってなかったので、私はちょっとホッとした。
「じゃ、次、副社長の所、行ってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい。じゃあ若月さん、またね」
「はい。お時間をいただき、ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
社長室を出て、副社長室へと向かう。
副社長室の作りも、社長室よりは少し小ぶりではあるもののほぼ同じで、秘書席の後ろに扉がある。
副社長秘書は西村さんと言って、30代前半の女性だ。
やっぱりとても有能そうで、……って、役員秘書なんだから当たり前か。
「野村さん、各フロア案内はもう行った?」
「まだです」
「じゃあ笹原くんのところが終わったら、行っておいで。副社長は夜の会合があるから出社はまだだし、私が代わりに電話番しておくから」
「ありがとうございます。さすが西村さんっ。戻ったら連絡します」
「了解。行ってらっしゃい」
手を振る西村さんに向かって深々とお辞儀をして、部屋を後にする。