嘘は溺愛のはじまり
挨拶を終えて、野村さんと私は深々と専務に頭を下げ、部屋を後にした。
その後、各フロアのざっくりとした案内と、仕事上関係してくる場所を案内してもらう。
確かにあちこち一度に回ると、覚えきれそうにない。
役員が訪れる可能性のある会議室が各フロアに点在していて、何階に何があったかを思い出すだけで一苦労だった。
一通り案内してもらい、再び自分のデスクに戻って来た。
各階へはエレベーターでの移動だけど、ひとつのフロアが広いので、案内される場所が一番端だったりしたらかなり歩く。
今日の午前中だけで結構な距離と歩数を歩いたんじゃないかな……万歩計アプリで計ってたら面白い結果になったかも知れない、なんて思ってしまうほどだった。
フロア案内に結構な時間を割いてしまったので、午前中は大まかな業務説明だけで終わったしまった。
昼休憩は電話番が必要になるので交代で休憩を取ることになっているけど、私が仕事に慣れるまでのしばらくの間は野村さんと一緒に自分の席で食事を摂ることになる。
お弁当を持ってきていて良かった。
「若月さんってどの辺に住んでるのー?」
「えっと、T駅です」
「えー、近いじゃん。いいなー」
篠宮専務のマンションは、会社の最寄り駅から3駅離れた場所にある。
都心の、最も便利なエリアだ。