嘘は溺愛のはじまり
――翌日、出社2日目。
出社早々、私は人事部のフロアに足を運んだ。
昨日渡された書類を提出するためだ。
書類に住所を書くにあたって、同じ住所で書いて提出しても大丈夫かを篠宮さんに尋ねると、「嘘は書けないでしょ?」と言われてしまった。
それはそうだけど……。
これは、まずくないのかな……。
人事の人も、住所を見て、気付いたりしないない、よね……?
昨日書類を手渡してくれた奥瀬さんのデスクへと足を進めた。
「奥瀬さん、おはようございます。昨日いただいた提出書類をお持ちしました」
「おはようございます。えっと、一応確認するので……あっちの打ち合わせ室に」
知的だけど優しい笑顔の奥瀬さんは、プライバシーの問題もあるので、と言って、フロアの隅にある小さな打ち合わせ室へと私を誘導した。
この打ち合わせ室は半透明のガラスで仕切られていて、誰が使用しているかまでは分からないものの、誰かがその部屋を利用している事は分かるぐらいには透けて見えるような作りになっている。
「どうぞ、かけて」
「はい」
促されて、私は奥瀬さんの向かい側に座る。
奥瀬さんはテーブルに書類を並べ、内容に不備がないかチェックを始めた。