嘘は溺愛のはじまり
カフェからマンションまではそう遠い道のりではないので、送っていただく必要は無いって何度も断ったけれど聞き入れて貰えず……。
カフェを出ると、道を挟んだ向かい側にある小さなお花屋さんが目に入る。
明るくライトアップされた美しい花々で溢れるそのお店は、まるでキラキラと輝く宝石のようだ。
花屋の店員である女性が、今から花束でも作るのだろうか、花を何本も選んで手に取っている。
私は思わず彼女から目を逸らした。
――見なければ良かった、見えないふりをすれば、良かったのに……。
彼女の姿を見ると、思い出したくない記憶が次々に蘇る。
「……結麻ちゃん? どうしたの?」
楓さんに声を掛けられ、私はハッと我に返った。
「ご、めんなさい、なんでも、ないです」
「……そう?」
「はい」
様子のおかしい私の顔を、楓さんが心配そうに覗き込む。
「なんでもない、です。行きましょう」
私はなんとか気持ちを切り替えて、足を踏み出した。