猫目先輩の甘い眼差し
交際を始めたと知っているのは、相談に乗ってくれた3人と、友人でもある朝日さんのみ。
他の部員やクラスメイトには話していない。
別に、発表する必要もないし。
もし言ったら、部活に行く度にからかわれるかもしれない。
俺は慣れてるけど、世蘭ちゃんが嫌な思いをするのは見たくないから黙っている。
「あっ、もしかして嫌だった⁉」
「いえ! 違います! 私も、友達に話したので。ただ……樫尾くんが少し気になって」
「郁海が? 何か言われたの?」
「そういうのではないんですけど……」
だんだん表情が曇っていく。
一旦広場から出て、詳しく聞き出す。
「実は、先輩と同じように、私も樫尾くんに話したんです」
俺と同じく終業式の日に、その場にいた友達も交えて報告としたいう。
『良かったね。おめでとう』と、お祝いの言葉をもらったらしいのだけど……。
「なんとなく、いつもと少し違ったんです。表情は変わってないんですけど、どこか寂しそうで」
「寂しそう?」
「はい。ほんの少し、声のトーンが低いなと感じたんです」