猫目先輩の甘い眼差し
「俺は別に変ではないと思いますよ。雷夜先輩はわかりませんけど」
「はははっ。あいつなら多分一蹴するな。運命とか信じてなさそうだし」
ハッキリ言い切る姿を想像する。
去年、朝日さんにオススメの少女漫画を教えてもらった時、『こんなこと実際にあるわけねーだろ!』って吐き捨ててたもんな。あくまでも漫画なのに。
「郁海は信じる? 運命の出会い」
「うーん……その人のおかげで人生が変わったのなら、信じるかもしれませんね」
「そっか」
お互いに思想を語りながら、彼を寮がある学校の門まで送り届け、家に向かってバイクを走らせた。
✾✾
「ただいまー」
「あ、れい兄おかえり」
帰宅して玄関のドアを開けると、5個下の弟、由宇が靴を履いている場に出くわした。
「今からどっか行くの?」
「あつ兄にお小遣いもらったから本屋さんに。お母さん達が先に帰ったら言っといて」
そう言い残すと、自転車の鍵を持って軽い足取りで出ていった。
先月入学祝いをあげたばかりなのに……またあげたのか。