婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
日葵が眉を寄せた。
「でも、目的の半分は鬼灯宗一郎への嫌がらせに思える。たぶんホーズキは買収防衛策を講じるんだろうけど、どうしたってダメージを負わずにはいられないから」
TOBを防ぐための対抗策には、GAI以外の友好的な投資家に株式を買ってもらうホワイトナイトや、買収される前に価値のある事業や資産を売却して意欲を削ぐクラウンジュエルなどが考えられる。
ただ、ホワイトナイトでは結局ほかの会社に経営権を譲ることになるし、クラウンジュエルはホーズキの企業価値を下げてしまう。
どのような防衛策を取っても、損失をゼロにすることは難しい。
日葵のバッグやタブレットを腕に抱えた樹が、ふと奈子を見下ろした。
「そういえば披露宴に来てましたよね、多々良亮」
奈子は小さくうなずく。
「本当は来られない予定だったの」
あのとき宗一郎は怒っているみたいだった。
今になって思えば、多々良がなにか仕掛けてくることをわかっていたのかもしれない。
樹が鼻にシワを寄せる。
「あー、敏腕経営者って雰囲気ありましたね。すげえ嫌な奴だったけど」
でも多々良は奈子に対して忠告したはずだ。
心を痛めないことを祈っていると。
(宗一郎さんが標的にされたら、私もつらくなるってことなのかな)
たしかに奈子は心配している。
だからといって、あの宗一郎が簡単に引き下がるとも思えない。