婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
宗一郎は花嫁を見ていなかった。
ちょうど誰かに呼ばれて、振り向いた瞬間だったのだ。
そうとわかっていても、記事に書かれている通り、この花嫁はかわいそうに見えた。
明らかに政略結婚と察せられる縁組で、婚約をネットニュースで報じられ、結婚披露宴はまるで鬼灯グループのレセプションパーティのようだったと。
記事は宗一郎がここのところ家に帰っていないことも知っていた。
結婚式から二ヶ月も経ってないのに。
当然、花嫁は毎晩ひとりぼっちで夫の帰りを待っている。
いったいどこまで勘繰るつもりなのか、記事は鬼灯家の後継問題も心配していた。
鬼灯宗一郎がこんなに花嫁を放置しているのでは、せっかく結婚をしたところで、いつまで待っても跡継ぎは生まれてこないと。
奈子にはこんな取材に応じる友人はいないけれど、花嫁の親友を自称する誰かが、茅島頭取の娘は優しくおっとりした性格で、人質のように結婚させられても宗一郎に尽くし、今にも心労で倒れそうなのだと証言している。
そのほかにも鬼灯家が保身のために花嫁を買ったとか、婚約を発表したときホーズキにどのくらいの経済効果があって、だから奈子の値段はいくらと計算できるだとか、宗一郎のイメージを徹底的に貶めるようなことが書いてあった。
誰が読んでも、鬼灯宗一郎は結婚をビジネスにしたのだとわかる。
取引に使われた花嫁を、かわいそうだと思うだろう。