婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

日葵はひとりで暮らしているマンションに泊まりにくるよう誘ってくれたし、樹は松濤の家まで送ると申し出てくれた。

奈子はどちらも断った。

ふたりに心配をかけたくない。
記事に真実を書きたてられて、傷ついたことも認めたくなかった。

日葵が険しい顔をして奈子の肘を掴む。

「奈子、そばにいてほしくなったら連絡してね」

隣で樹が何度もうなずく。

「俺がブラックリストを代表して、鬼灯宗一郎に言ってやってもいいですよ。奈子さんを大事にしないなら取り上げるぞって」

初対面で宗一郎にけんかを売ったくらいだから、樹はいざとなったら本当に奈子をかばってくれそうだった。
だけどそれはきっと、日葵を悲しませる。

奈子は笑って首を振った。

「ありがとう、でも大丈夫だから」

たぶん、宗一郎は帰ってこない。
TOBへの対応で忙しいはずだ。

すぐに取締役会の準備をして、買収への反対意見を表明しなくてはならない。
どんな防衛策がもっとも適切か、専門家を交えて検討する必要もある。

もしもあの記事がなければ、きっと奈子には電話さえかけてこない。

もちろん、それが正しい。
宗一郎はいつだっていちばん効率のいい方法を選択できる。
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