婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
「ちょっと、通して!」
日葵は奈子の腕を引きながら人混みをかき分ける。
「壬生さん、こっちです!」
会議室の中央では、樹がスペースを陣取っていた。
真っすぐに手を上げて日葵を呼んでいる。
日葵と奈子は苦労して樹のそばまでたどり着いた。
画面がよく見えるように、背の高いふたりが奈子を前に立たせてうしろに並ぶ。
スクリーンには宗一郎が映っていた。
鬼灯グループの年次開発者会議の映像だ。
世界各国に向けてオンラインで配信されているので、誰かがテレビに接続して、ここで見られるようにしたのだろう。
ステージの真ん中に立った宗一郎が気取りのない調子で話す。
『この最新技術を応用し、今後一年以内に、ホーズキをはじめとするグループ企業のセキュリティ管理をすべて量子暗号へと移行していきます』
奈子はうしろにいる日葵をパッと振り返った。
「量子暗号?」
「ちゃんと見てて」
日葵が奈子の肩を掴んで前を向かせる。
ふと画面が切り替わり、八雲京が詳しい研究内容を解説し始めた。
重ねて日葵がこれまでの発表を説明してくれる。