婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

樹が眉を寄せて奈子を見下ろす。

「茅島さん、もしかしてこの記者が杉咲なんですか」

奈子は目眩がしそうなくらい緊張して、日葵にしっかりと腕を掴まれていなかったら、そのままうずくまっていたかもしれない。

『たしかに妻とは、茅島頭取の紹介で出会って結婚をしました』

宗一郎がはっきりと認める。
それからふと、目尻を下げて優しく笑った。

『でも、愛しています。すべてをかけて大切にしたい。だからこの先どんな批判を受けようと、妻のことは、それ以上なにもお答えできません』

会議室はわっと騒がしくなった。
日葵が高らかに笑って奈子を抱きしめる。

「ほら、言ったでしょ! 私は鬼灯宗一郎を評価してるの」

奈子は口を引き結び、耐えられなくなって手のひらに顔をうずめた。

知らなかった。
宗一郎が、奈子を愛しているなんて。

今まで一度も言ったことがないくせに。
でも、うそではないとわかる。

いつも奈子が腕の中にいるときと同じように、正直にほほ笑んでいたから。

日葵がギョッとして奈子を覗き込む。

「あ、ちょっと! ここで泣くなって言ってるのに」

「茅島さん、株価暴落しちゃいますよ」

樹が慌てて奈子を隠すように立つ。

だけど会議室は宗一郎の告白に盛り上がるばかりで、奈子がここで泣いていることには、誰も注目しないのだった。
< 153 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop